Business Journal“駐在員の下僕”海外現地採用社員の実態〜コストカット要員、そのまま最下層へ…を読んで
『Business Journal “駐在員の下僕”海外現地採用社員の実態〜コストカット要員、そのまま最下層へ…』、この記事も最近多い海外脱出系の記事の1つなのでしょう。
しかし、このタイトル、特に「下僕」 「最下層へ…」という言葉には憤りを感じました。
「下僕」とはgoo辞書によると「召使いの男。下男。しもべ」という意味です。駐在員と現地採用社員の関係は、上司と部下であり、それ以下のイメージを持つ「下僕」という言葉をあえて使うことに疑問を持ちました。なぜ「駐在員の部下」と書かないのでしょうか? 海外で現地採用で働く日本人に失礼な話です。
「結論から言って、現採は絶対にやめたほうがいい」「理由はただ1つ。駐在員と現採では、身分が違うからです」
身分=待遇が違う、それは当たり前のことです。
社命で好む・好まざるに関係なく、出向という形で海外赴任しているのが駐在員です。
例えば、奥さんが日本の仕事を辞めたり、子供が仲の良い友達と別れたりといった家族にも大きな変化を与えての海外赴任です。その為の保証、少なくとも日本で働いているのと同等以上の待遇を保証されるのは当然のことです。駐在員の所属は日本本社であり、あくまでも現地法人への出向者なのです。
一方、現地採用は自らの意思で、海外で働こうと決めた人です。誰に強制されたわけではありません。
例え日系企業といえども、海外現地法人の社員であり、日本本社の社員ではありません。その為、現地法人の規定に沿った待遇での雇用になるのです。
日本で外資系企業の現地法人に勤めるのと同じことだと考えればわかりやすいでしょう。外国の本社から来た外国人の経営幹部は給料以外にも、高級マンションの家賃・子供のインターナショナルスクールの授業料といった駐在手当てを支給されています。一方、そこで働く日本人社員は、日本の現地法人の規定に沿った待遇です。そこには同じような身分=待遇の差があります。
アジア諸国の現採日本人の給与は、日本円にして9万円~17万円が目安。さらに駐在員は、社宅として借り上げた現地最高クラスの住居を、メイドと運転手付きであてがわれ、接待費など経費も使い放題なんて場合も多々あるが、現採日本人は年金や雇用保険などの福利厚生さえ、あまり期待できない
待遇の事情は国により大きく違いますが、シンガポールに限れば、就労ビザの最低給与の兼ね合いから、現地採用の給与のボリュームゾーンは、$3000~$5000程度(約22~37万円)です。
駐在員の待遇も、他のアジア諸国より物価・人件費・乗用車が高いこともあり、現地最高クラスの住居・メイド・運転手付き・経費使い放題といった待遇の日本人駐在員は非常に限られています。
一方、現地採用は現地法人の社員であり、日本本社の社員ではない為、日本の年金や雇用保険の面倒を見る義務は日本本社にはありません。駐在員は、日本本社の社員ですので、引き続き、日本の年金や雇用保険等は本社で面倒を見ています。
その上、中にはあからさまに現採日本人を見下す駐在員もいる。
「東南アジアだと駐在員が2~3人しかいない拠点も多く、そのわりに1人の裁量が大きいため、天狗になってしまう人が多い。そのため、現採日本人に『俺は100メートルも歩かないから、車を出せ』だとか、『書類はメールで送りつけるな! 俺の席まで持参しろ』などと言って、使用人扱いする駐在員もいるにはいます」(食品メーカー元駐在員)
もちろんそういう人も一部にはいるでしょうが、駐在員がそのような状態では、そもそも現地法人の地元社員もすぐに辞めてしまい、その駐在員が実績を残せるとは思えません。
日本で働いていても、勘違い上司からのパワハラがあるように、企業である以上、そういう問題は日本企業でも外資企業でも、国に関係なくあるでしょう。
そのような上司を野放しにしているその企業が悪いのであって、改善されなければ、さっさと転職すれば良いのです。
仕事内容も、本社駐在員と現採日本人では、まるで違う。本社から来る駐在員は、会社の経営戦略の1つとしての現地事業という枠で、ダイナミックな仕事ができるのに対し、現採日本人は現地職員の取りまとめ程度の仕事しかさせてもらえない。
現地採用求人の多くがアシスタント職であることがそのようなイメージを持たれる理由なのでしょう。
しかし、これも海外の日系企業だけがそうであるのではなく、どの企業も、どの国でも、経営幹部・上級職になればなるほど求人数は少なく、現場職になればなるほど求人は多くなります。
ただ1つ言えるのは、海外の場合、就労ビザの関係上、日本で言うパートや派遣社員扱いで日本人を採用するのは難しく、日本ではパートや派遣社員が担当するレベルの業務も、正社員として採用された現地採用の日本人が担当することは少なくありません。
但しこれは日系企業に限らず、むしろ外資のグローバル企業の現地採用求人に多いです。アジアにおいて、日本マーケットのコールセンターや日本法人のバックオフィス業務を行っていることが理由です。
こうした日本ではパートや派遣社員が担当するレベルの仕事に海外で就くことが良いか悪いかは、その人の仕事観・人生観で何に優先順位を置くかの話ですので、良い・悪いの問題ではないと思います。キャリア志向の人には、ありえない選択なのかもしれませんが、実際、そうした仕事があり、その仕事を選び生活の糧としているのです。
「あるグローバル企業の現採日本人が、本社幹部とテレビ会議したところ、『君たちはしょせん小さなマーケットの現地スタッフなのだから、こぢんまりした戦略より、もっと思い切ったことをしなさい。君たちの市場を失っても、本社はまったく痛くもかゆくもないのだから』とハッキリ言われたことさえあるそうです」
先ほどの現採日本人を見下す駐在員と同様、本社がそのような考えで海外で成功できるとは思えません。
そういう社風の会社なので、日本国内でもきっとそうなのでしょう。さっさと見切りをつけて転職すれば良いのです。
現地支局の業績が振るわなければ、あっという間に本社スタッフが「再建」あるいは「撤退」しにやってきて、現採日本人の出る幕がないどころか、正社員ではないだけに、あっけなく解雇されることも多々あるという。
これも当たり前のことです。日本で働いていても、会社が倒産したり、勤めていた外資系企業が撤退あるいは他国に拠点を移せば同様に解雇です。海外で働いている以上、外国人の身分ですので、その国の社会保障も受けられません。そもそもシンガポールの場合、シンガポール人ですら失業保険がない国です。
クビを切られ、失意のまま日本に帰国といっても、帰りの旅費さえ出ない会社もある。また、「故郷に錦を飾る」つもりで日本を後にしているだけに、おいそれとは帰国できず、「そのまま現地の下層階級へと沈んでいく人も多い」(食品メーカー元駐在員)。
現採組は雇用保険に入っていない場合が多いため、失業保険の給付さえ受けられないから、失業期間をしのぐには、かなりの貯金がないときつい。さらに言うなら、転職もそう容易ではないという。
「クビを切られても帰りの旅費さえ出ない会社もある」 これも同様、現地法人の社員ですから、帰国費用を企業が持つ義務はありません。むしろ出してくれる企業のほうが珍しいでしょう。
「そのまま現地の下層階級へと沈んでいく人も多い」、この意味がわかりません。
タイやフィリピンで帰りの旅費もなくオーバーステイをしている日本人のことを指しているのでしょうか? 現地採用で職を得ていた日本人がそこまで落ちぶれてしまうとは考えづらいですし、少なくともシンガポールでは「下層階級へと沈んでいく」ような日本人は聞いたことはありません。
そもそも「故郷に錦を飾る」為に海外に出る日本人が今時どのくらいいるのでしょうか?
クビになったら日本で働くのと同様に転職活動をすれば良く、納得できる仕事が見つからなければ日本に帰国するなり、他国で職を探せば良いだけの話です。一般的にその国での就労経験があれば、初めての就職よりも転職はしやすくなります。それでも就労経験を生かして転職できないのなら、厳しい言い方ですが、その人は日本に帰国しても同様に転職は厳しいと思います。
「現地採用は、しょせん現地採用。どれだけ優秀だろうが、現地の事業や言語に精通していようが、現地採用という枠からは出られません。本社組になりたいと言っても、人事部に『しょせん、現地採用なんでしょ?』と扱われるだけです」
確率的にはもちろんそうでしょう。しかし先に書いたように現地採用の求人には、日本であればパートや派遣社員が担当するレベルの仕事も多いのです。日本でパートや派遣社員で働いていて、正社員になれる確率はそれほど高くはないのではないでしょうか? あるいは日本で外資企業で働いていて、本社採用に切り替われる確立はどのくらいあるでしょうか?
しかし、中には仕事が認められて、現地採用から日本本社採用になった例もあります。
弊社でお手伝いした留学生の中にも決して割合は多くありませんが、何人かそういった方がいます。またシンガポールの場合、地域統括本社機能を担っている企業も多いことから、シンガポールの統括本社から、子会社である近隣諸国へ駐在員として出向という方もいます。もちろん、そういう方々はそれだけのモノを持っていて、現地採用として働いている時も十分な実績を上げている方ばかりです。
そもそも現採日本人は、駐在員と比べて給料が安い「コストカット要員」だからこその使い勝手があったわけで、そこからのキャリアアップは、かなり難しいようだ。
自分が好きな土地に住み、好きな文化に触れながら仕事をするのが幸せ、といった価値観で現採日本人として働くのは有意義かもしれないが、「世界を股にかけて活躍する第一歩に」なんて野心から現採を目指すのは、無謀かもしれない。
もちろん、アシスタントレベルで何の努力もせずに日々生活を送っていたら、キャリアアップは難しいでしょう。しかしそれは日本でも同じです。日本で自らキャリアを積み上げていける人であれば、海外でもそれは可能ですし、それが出来ない人、それを望まない人は、日本でも海外でもキャリアアップは困難なのでしょう。
そもそも現地採用で働く日本人には、数年間海外で生活してみたいだけで、世界を股にかけて活躍するなんて大それたことは考えてない・・・という人もたくさんいます。(それなのに駐在員との待遇差に不満を言っている人は論外ですが)
海外で働くといっても特別なことではありません。海外だから困難と思ったり、反対に海外だから簡単だと思ってみたり、海外就職に対して色々と思い巡らすと思いますが、結局はその人次第です。海外就職を目指す人には、氾濫する情報に流されず、仕事観・人生観・自分の夢や目標をしっかりと持って、自ら信じた・選んだ道を進んで欲しいと思います。
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