シンガポールの街を歩いていて、ふと不思議に思ったことはありませんか?
シンガポールはイギリス英語の国ですが、建物の階数はイギリス式ではなく、日本と同じアメリカ式(1階が地上階)です。
これに気づいて「おや?」と疑問に思っている方も少なくないはずです。
今回はなぜシンガポールがイギリス式の「グランドフロア=1階」を使わないのか、その理由と歴史を紐解きます。

1階は1階?イギリス式との決定的な違い
イギリスやヨーロッパ、オーストラリアなどを旅行すると、建物の数え方に戸惑うことがあります。
・イギリス式:地面の階は「G(Ground Floor)」、その上が「1階」
・日本・アメリカ式:地上階が「1階(Level 1)」
シンガポールはイギリス英語の国ですが、建物の階数は「日本と同じ数え方(Level 1 = 地上階)」に統一されています。
1983年に起きた「階数の統一」
実は、かつてのシンガポールもイギリス式で階数を数えていたそうです。
しかし、1983年3月1日、政府の方針によってすべての建物が現在の数え方に統一されました。
当時、高層の公団団地(HDB)が次々と建設される中で、イギリス式の数え方が郵便配達や行政管理において混乱を招くと判断されたためです。
さらに、多民族国家であるシンガポールでは、それぞれの言語における「階数」の感覚がイギリス式と異なっていたことも大きな理由でした。
例えば中国語で1階を意味する「一楼(イーロウ)」は日本と同じ1階を意味します。マレー語でも最初の階を「Tingkat Satu(1階)」と数えます。
このように、イギリス式の「地上は0(Ground)」という概念よりも、それぞれの民族が持つ「地上の階は1」という自然な感覚に合わせる方が国民にとって理解しやすかったのです。
単にシステムを一斉に切り替えたというだけでなく、バラバラだった国民の生活習慣レベルのルールを、国家として使いやすく合理的なものへ再定義した出来事と言えます。
知っておくと便利な「住所の読み方」
シンガポールの住所には、必ずと言っていいほど「#(ハッシュタグ)」から始まる数字が付いています。
例えば、#01-23 という表記があれば、それは「1階の23号室」という意味です。現在、シンガポールのエレベーターで見かける主な表記は以下の通りです。
・L1 / 1:地上階
・B1 / B2:地下(BasemenのB)
・M:中二階(MezzanineのM)
シンガポール・マレーシアの違い
日本と同じ数え方のため、日本人は違和感を覚えることなく利用していますが、実はその裏にはシンガポールならではのシステマチックで合理的な考え方や多民族共生の工夫が見えてきます。
次にシンガポールのエレベーターに乗る時は、こんな歴史があったことを思い出しながら「1」のボタンを押してみてください。
ちなみに、お隣の国マレーシアでは、今でもイギリス式の数え方が一般的です。地上階は「G」(グランドフロア)、その上の階から「1階」と数えるため、隣国同士でもエレベーターのボタンの感覚が異なるのは面白いポイントです。
参考資料(シンガポール国立公文書館)
この記事は1981年の政府発表を参考にしています。
New Numbering System for Highrise Buildings (1981)
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